マンションを相続する見込みの方にとって、そのマンションがどれくらいの資産価値を持つのかは非常に重要な問題です。相続税の算出基準となるだけでなく、固定資産税の負担額、今後そのマンションを売却するか賃貸に出すか、あるいは自分で住むかといった意思決定にも大きく影響するからです。この記事では、相続マンションの評価額の調べ方と、知っておくべきポイントについて解説します。
マンションの相続と評価額の重要性
マンションを相続する際、最初に直面するのが「このマンションはいくらの価値があるのか」という問いです。評価額を知ることが重要な理由はいくつかあります。
まず第一に、相続税の計算基準となるためです。相続税は遺産の評価額に基づいて算出されます。適切な評価額を把握しておかないと、過大な税負担を強いられる可能性があります。
次に、毎年の固定資産税の負担額を知る必要があります。マンションの場合、「土地に対する固定資産税」と「建物に対する固定資産税」の両方が課税されます。これらは別個に評価され、土地部分については区分所有者全員の共有持分として、建物部分については専有部分の床面積割合に応じて評価されるという特徴があります。
さらに、相続後の資産運用の判断材料となります。マンションの評価額が高ければ売却して現金化するという選択肢が魅力的になりますし、評価額が低くても賃貸収入が見込めるなら保有し続ける方が有利かもしれません。
また、兄弟姉妹など複数の相続人がいる場合、遺産分割の際の公平性を担保するためにも正確な評価額の把握は欠かせません。
将来のリフォームや建て替えなどの計画を立てる際にも、現在の資産価値を知っておくことは重要です。マンションの場合、築年数や立地によって資産価値の推移が異なるため、将来的な資産価値の変動も予測できるようになります。
税負担と評価額の関係
上述のとおり、相続したマンションにかかる固定資産税は、土地と建物それぞれに課税されることを理解しておく必要があります。マンションの場合、土地部分は区分所有者全員の共有財産として持分に応じて課税され、建物部分は専有面積に応じて課税されます。
固定資産税評価額は、通常3年ごとに見直されます(これを「評価替え」と言います)。相続直後は前所有者の時の評価額が引き継がれますが、次回の評価替えで変動する可能性があることを念頭に置いておきましょう。
相続税評価額(路線価に基づく評価額)と固定資産税評価額は異なる基準で算出されるため、両者の金額は一致しません。一般的に相続税評価額の方が低く設定されています。
マンション評価額の調べ方
マンションの評価額を調べる方法はいくつかありますが、目的によって最適な方法が異なります。ここでは主な調査方法とそれぞれの特徴を紹介します。
1. 固定資産税評価額による確認
毎年送付される固定資産税納税通知書には、土地と建物それぞれの評価額が記載されています。マンションの場合、土地部分は共有持分として評価され、建物部分は専有部分の床面積に応じた評価となります。
この評価額は、地方自治体が3年ごとに見直す固定資産税評価額に基づいており、一般的に市場価格の70%程度に設定されています。相続税評価額の算出にも関連するため、相続を検討している方は必ず確認しておきましょう。
納税通知書を紛失した場合は、所有者本人であれば市区町村の固定資産税課で評価証明書を取得できます。相続予定者が事前に確認する場合は、現所有者の同意や委任状が必要となることがほとんどです。
2. 路線価による評価(相続税評価額)
相続税を計算する際に参照されるのが、国税庁が毎年7月に発表する「路線価」に基づく評価額です。路線価とは、道路に面した土地の1㎡あたりの評価額のことで、これに土地面積を掛け、さらに一定の調整率を掛けて土地部分の評価額を算出します。
マンションの場合は、土地部分と建物部分を分けて評価します。土地部分は、マンション全体の敷地に対する各区分所有者の持分割合に応じて評価されます。建物部分は固定資産税評価額をもとに、経年劣化を考慮した減価償却後の金額で評価されるのが一般的です。
路線価は国税庁のホームページで閲覧でき、自分のマンションの所在地から確認できます。ただし、路線価による評価額は一般的に市場価格より低く設定されているため、売却予定価格の目安にはなりにくいという特徴があります。
3. 不動産会社による査定
マンションを売却する予定がある場合は、不動産会社に査定を依頼するのが最も現実的な市場価値を知る方法です。多くの不動産会社では無料で査定サービスを提供しており、複数の会社に依頼して平均値を取ることで、より正確な市場価値を把握できます。
最近はインターネット上で簡易査定を受けられるサービスも増えていますが、実際に物件を見てもらう訪問査定の方がより正確な評価が得られます。査定時には、マンションの管理状態や修繕履歴、管理組合の運営状況なども評価の対象となるため、関連書類を準備しておくと良いでしょう。
4. 不動産鑑定士による鑑定評価
より正確で公的な評価が必要な場合、不動産鑑定士による鑑定評価を依頼する方法があります。裁判所での遺産分割調停や、相続税の申告で特別な事情がある場合などに利用されることが多いです。
鑑定評価は有料(10万円〜30万円程度)ですが、専門家による詳細な調査に基づいた評価額が得られるため、相続人間での争いを防ぐ根拠資料として役立ちます。
5. オンライン不動産情報サイトの参考価格
ご自身で概算価格を知りたい場合は、SUUMOやHOME’Sなどの不動産情報サイトで、同じマンションの他の部屋や、近隣の類似物件の販売価格を調べる方法もあります。過去の取引事例を公開しているサイトもあり、参考になります。
ただし、これらはあくまで参考価格であり、実際の評価額は個別の条件(階数、向き、内装状態など)によって大きく変わることを理解しておく必要があります。
評価額に影響を与える要素
マンションの評価額は多くの要素によって決まりますが、特に以下のポイントが大きく影響します。
1. 立地条件
最寄り駅からの距離や、周辺の生活利便施設(スーパー、病院、学校など)の充実度は評価額に大きく影響します。特に都心部や交通の便が良い地域のマンションは、郊外に比べて資産価値の下落が緩やかな傾向にあります。これは固定資産税評価においても同様で、土地部分の評価額に大きく反映されます。
2. 築年数と建物の状態
一般的に築年数が経つほど評価額は下がりますが、適切なメンテナンスが行われているマンションは資産価値の低下が抑えられます。大規模修繕の実施状況や、外壁・エントランスなどの共用部分の状態も重要なポイントです。
建物部分の固定資産税評価額は、経年による減価償却が考慮されるため、築年数が古いほど建物部分の税負担は軽くなります。しかし、土地部分については地価の変動に応じて評価額が変わるため、人気エリアでは築年数が経っても税負担が軽減されない場合があります。
3. マンションの管理状態
管理組合の運営状況や修繕積立金の積立状況も重要な評価ポイントです。修繕積立金が適切に積み立てられているマンション、管理規約がしっかりしているマンションは資産価値が維持されやすいと言えます。
4. 専有部分の条件
同じマンション内でも、階数や向き、日当たり、眺望などによって評価額は変わります。一般的に高層階、角部屋、南向きなどは評価が高くなる傾向があります。また、リフォームの状態も重要で、水回りなどが最新設備に更新されていれば、売却時の目安となる査定額が向上します。
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