【Q&A_4】相続マンションの近隣にタワマンが建設予定。眺望喪失による資産価値への影響と対応策は?

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ご質問

はじめまして。48歳の会社員男性です。妻と高校生の子ども2人の4人家族で、現在は持ち家の一戸建てに住んでいます。父(78歳)が所有する都内のマンションを将来相続する予定なのですが、最近気がかりな問題が発生しました。

このマンションは築15年、東京都23区内の駅徒歩7分、12階建ての9階部分にある3LDK(75㎡)で、父の購入当時は5,200万円でした。現在の推定市場価値は約6,000万円程度と不動産会社に言われています。

先日、父から連絡があり、このマンションの南側隣接地に20階建ての高層マンションが建設される計画があることがわかりました。建設予定の建物は父のマンションよりも高く、完成すると今まで天候に恵まれた日には楽しめていた富士山の眺望が完全に遮られ、日当たりも大幅に悪くなる可能性が高いとのことです。

父は高齢のため、現在は私の実家である郊外の一戸建てに住んでおり、このマンションは賃貸に出していました(月額家賃17万円)。私たち家族は将来このマンションに住むか、賃貸運用を続けるか、あるいは売却するか検討していたところでした。

このような状況で、眺望や日当たりの喪失によるマンションの資産価値下落や、建設に対して法的に対抗できる手段について気になっています。

特に資産価値の大幅な下落が心配で、今後の対応に悩んでいます。専門家の視点からアドバイスをいただけると幸いです。

回答

眺望・日当たり喪失によるマンション資産価値への影響

マンション相続に関するご相談ありがとうございます。ご心配されている近隣の高層建築計画は、確かに資産価値に影響を与える可能性の高い問題です。

まず、眺望や日当たりの喪失がマンションの資産価値に与える影響について説明します。一般的に、眺望や日当たりの良さは不動産価値の重要な要素です。特に富士山が見えるという希少価値は、東京の物件では大きな魅力となります。

具体的な数値で言うと、眺望の喪失により5〜15%程度、日当たりの悪化でさらに5〜10%程度の資産価値下落が予想されます。現在6,000万円と評価されているマンションが、最悪のケースで合計15〜20%、つまり900〜1,200万円程度の価値下落が考えられます。

ただし、この下落率は物件の他の魅力要素(駅近、間取り、設備など)や市場動向によって変動します。23区という立地の良さは依然として強みですので、他の条件が良ければ下落幅は小さくなる可能性もあります。

建設計画に対する法的対抗手段

建設計画に対して取りうる法的手段ですが、残念ながら限られています。日本の法律では、土地所有者には原則として自由に建築物を建てる権利があり、「眺望権」は明確な法的権利として確立されていません

しかし、以下の点を確認する価値があります。

  1. 建築基準法違反の有無:高さ制限、斜線制限、日影規制などの違反がないか確認しましょう。違反があれば行政に是正を求められます。
  2. 地区計画や景観条例:地域によっては独自の制限がある場合があります。区の都市計画課に問い合わせてみてください。
  3. 近隣説明会への参加:大規模建築物の場合、建設業者は近隣住民への説明会を開催することが多いです。この場で意見を述べ、計画の一部修正(例:低層階部分のセットバックなど)を交渉できる可能性があります。
  4. 住民組織による交渉:マンション管理組合を通じて、集団で交渉するほうが効果的な場合があります。

実際の訴訟は時間と費用がかかり、勝訴の可能性も低いため、現実的な選択肢としては難しいと考えられます。

相続と売却のタイミングについて

売却か保有かの判断は、以下の観点から検討しましょう。

  1. 建設前の売却:建設計画が広く知られる前であれば、現在の価格で売却できる可能性があります。ただし、宅地建物取引業法により、重要事項として買主に建設計画を説明する義務があります。
  2. 建設中の市場動向:建設が始まると、一般的に周辺物件の価格は下落します。ただし、実際の建物が完成するまでは、具体的な影響が見えにくいため、極端な値下がりにはならないケースも多いです。
  3. 建設後の価格変動:建設完了後、実際の影響が明確になると価格は安定します。下落幅が予想より小さければ、この時点で売却を検討する選択肢もあります。
  4. 長期保有の視点:23区内という好立地のため、長期的には価値が維持される可能性が高いです。20〜30年の長期スパンで見れば、眺望喪失の影響は相対的に小さくなる可能性があります。
  5. 税金の観点:相続前にお父様が売却する場合と、相続後にご質問者様が売却する場合では、税金面で大きな違いがあります。特に3,000万円の居住用財産の特別控除が適用できるかどうかで、大きく変わってきます。

賃貸継続の場合の家賃への影響

賃貸を継続する場合、家賃への影響も考慮する必要があります。現在の月額家賃17万円に対して、眺望や日当たりの喪失により、約5〜10%の家賃下落が予想されます。具体的には、月額8,500円〜17,000円の減少、年間にすると10〜20万円程度の家賃収入減少となる可能性があります。

ただし、賃貸市場は売買市場ほど眺望や日当たりに敏感に反応しない傾向があります。特に、交通利便性の高い物件は需要が高いため、適切なリフォームや設備更新を行うことで、家賃下落を最小限に抑えられる可能性があります。

資産価値を守るための具体的対策

  1. 不動産鑑定評価の取得:建設前の現在の正確な価値を専門家に評価してもらいましょう。将来の価値下落の比較基準になります。費用は5〜10万円程度です。
  2. リノベーションの検討:眺望喪失の影響を相殺するために、内装や設備のグレードアップを検討しましょう。特にキッチンやバスルームの刷新は費用対効果が高いです。300〜500万円程度の投資で、価値下落を一部相殺できる可能性があります。
  3. 管理組合活動への参加:お父様が直接参加できない場合は、委任状を出すなどして、建設計画に関する管理組合の活動に関与しましょう。
  4. 節税対策の検討:相続税評価額が下がる可能性があるため、相続税の専門家に相談し、適切な対策を講じることをお勧めします。

さいごに

このケースでは、以下のステップを踏まれることをお勧めします。

  1. 情報収集(今すぐ): 建設計画の詳細(工期、正確な高さ、配置など)を区役所や建設会社から入手しましょう。
  2. 専門家への相談(1ヶ月以内): 不動産鑑定士、税理士、弁護士など複数の専門家の意見を聞きましょう。
  3. 管理組合への働きかけ(3ヶ月以内): 他の住民と連携し、建設会社との交渉可能性を探りましょう。
  4. 売却/保有の決断(半年以内): 収集した情報をもとに、売却か保有かの決断をしましょう。売却する場合は、建設工事が本格化する前が望ましいです。
  5. 定期的な市場調査:どのような選択を下すにしても、定期的に周辺の不動産市場を調査し、最適なタイミングを逃さないようにしましょう。

近隣の建設計画によって資産価値が影響を受けるのは残念なことですが、適切な情報収集と専門家のサポートを受けることで、最善の選択ができるはずです。今後も何かご質問があれば、いつでもご相談ください。

股抜きナツメグ

40代の男性会社員。都内で親のマンションを相続したことをきっかけに、相続マンションを取り巻く複雑怪奇な問題に直面。今後起こり得る事態への不安や、売却や賃貸といった判断の難しさに悩まされた経験から、本サイトでの情報発信を開始。

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