【Q&A_6】相続マンションを法人に売却したいのですが、個人売却との違いはありますか?

Q&A集

ご質問

東京都在住の62歳男性です。昨年父が亡くなり、都内のマンション(築40年、3LDK)を相続いたしました。現在は空き家状態で、固定資産税や管理費の負担が重く、できるだけ早く売却したいと考えております。

先日、知人から「法人に売却すると税金面でメリットがある場合がある」という話を聞きました。私は今まで不動産の売却は個人間で行うものだと思っていましたが、法人への売却という選択肢があることを初めて知りました。

具体的に、法人への売却と個人への売却では、どのような違いがあるのでしょうか。税金面での違い、手続きの違い、注意すべき点があれば教えてください。また、どのような法人が中古マンションを購入するのか、法人への売却を進める際にはどこに相談すれば良いのかも知りたいです。

現在の状況として、相続税の納付は完了しており、マンションの名義変更も済んでおります。売却予想価格は2,500万円程度で、父の取得時の価格は3,600万円程度だったと記録に残っています。よろしくお願いいたします。

回答

法人への売却と個人への売却の基本的な違い

相続マンションの売却において、売却先が法人か個人かによって、いくつかの重要な違いが生じます。まず基本的な相違点を整理しましょう。

購入目的の違い
個人の購入者は主に居住用として購入しますが、法人の場合は投資用、賃貸事業用、社員寮、事務所利用など、事業目的での購入が一般的です。この目的の違いが、価格交渉や条件面に影響を与えます。

資金調達方法の違い
個人購入者の多くは住宅ローンを利用しますが、法人の場合は事業用融資や自己資金での購入となります。法人の方が資金調達の選択肢が多く、現金での購入も珍しくありません。

意思決定プロセスの違い
個人の場合は購入者本人またはその家族での意思決定となりますが、法人では役員会での承認や稟議手続きが必要な場合があります。そのため、契約までの期間が個人より長くなる可能性があります。

税金面での主な違いと注意点

ご質問者様のケースでは、取得価格が3,600万円で売却予想価格が2,500万円ということから、譲渡損失が1,100万円発生する見込みです。この状況での税金面の取り扱いについて説明します。

譲渡所得税の取り扱い

売却先が個人か法人かに関わらず、譲渡損失が発生する場合、譲渡所得税は発生しません。ただし、将来的に他の不動産で譲渡益が生じた場合、この損失が相殺される可能性があります。

印紙税の負担
売買契約書に貼付する印紙税は、契約金額に応じて決まります。2,500万円の売却の場合、印紙税は2万円となります。通常、売主と買主が1通ずつ契約書を作成し、それぞれが印紙税を負担します。法人との取引でも、この点に違いはありません。

消費税の注意点
個人が居住用不動産を売却する場合、消費税は非課税です。法人への売却でも、土地部分は非課税、建物部分についても居住用財産の譲渡として非課税扱いとなります。

マンションを購入する法人の種類と特徴

築40年の区分所有マンション(マンション一室)を購入する法人にはいくつかのパターンがあります。それぞれの特徴を理解することで、より適切な売却戦略を立てることができます。

個人投資家が設立した資産管理会社

個人投資家が節税や相続対策のために設立した法人による購入です。区分所有マンションの賃貸運用を目的とし、家賃収入を法人で受け取ることで所得分散を図ります。築40年でも立地が良く賃貸需要が見込める物件であれば検討対象となります。

不動産管理会社・仲介会社

地域の賃貸管理を手掛ける会社が、管理物件拡大や自社保有物件として購入するケースです。既存の管理ノウハウを活かして賃貸運用を行います。管理会社であれば、築古物件のリフォームや入居者募集に精通しているため、適正価格での購入が期待できます

③一般企業(社員住宅・来客用宿泊施設目的)

従業員の社員寮や転勤者の一時住宅、取引先の宿泊施設として活用する目的で購入する企業も近年珍しくありません。特に都心部では、ホテル代わりの来客用宿泊施設として区分マンションを購入する企業も増えています。

④買取再販事業者

中古マンションを購入してリフォームし、個人向けに再販する事業者です。築40年の物件でも、水回り設備の更新や内装リフォームを施すことで商品価値を高めて販売します。現金決済が可能で、比較的短期間での取引完了が期待できます。

法人への売却を進める際の相談先と進め方

法人への売却を検討する場合、適切な相談先を選ぶことが成功の鍵となります。ご質問者様の状況に応じた具体的なアプローチ方法をご説明します。

不動産仲介会社への相談
まずは地域に精通した不動産仲介会社に相談することをお勧めします。法人顧客を多く抱える仲介会社であれば、購入希望の法人を紹介してもらえる可能性があります。複数の仲介会社に相談し、法人向け販売の実績を確認しましょう。

不動産買取専門業者への相談
早期売却を希望する場合は、買取専門業者への相談も有効です。これらの業者は法人として直接購入するため、仲介手数料が不要で、短期間での現金決済が可能です。ただし、市場価格より10~20%程度低い価格となることが一般的です。

税理士との連携
譲渡損失が発生するご質問者様のケースでは、将来の税務上の取り扱いについて税理士に相談することをお勧めします。他の不動産所得がある場合の損益通算や、将来的な譲渡益との相殺について詳しいアドバイスを受けることができます。

さいごに

法人に売却することのメリット
築40年という築年数と譲渡損失が発生する状況を考慮すると、法人への売却には大きく2つのメリットがあります。まず、投資用として購入する法人は築年数よりも立地や収益性を重視するため、築古物件でも適正評価を受けやすい点です。また、現金決済が可能な法人買取業者であれば、早期売却というご質問者様の希望に合致します

注意すべきポイント
譲渡損失が発生する場合でも、将来的に他の不動産で利益が出た際の損益通算の可能性があるため、売却時の必要書類は適切に保管しておきましょう。また、法人との取引では契約条項や決済条件が複雑になる場合があるため、信頼できる不動産会社との連携が重要です。

最終的なアドバイス
売却先が法人と個人のどちらが良いかは、実際の購入希望者の条件次第です。重要なのは選択肢を狭めず、複数のルートで売却活動を行うことです。ご質問様の場合、固定資産税や管理費の負担を考慮すると、適正価格での早期売却が最も合理的な選択といえるでしょう。

股抜きナツメグ

40代の男性会社員。都内で親のマンションを相続したことをきっかけに、相続マンションを取り巻く複雑怪奇な問題に直面。今後起こり得る事態への不安や、売却や賃貸といった判断の難しさに悩まされた経験から、本サイトでの情報発信を開始。

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