エアコンは評価対象?相続マンションの相続税評価においての家財道具の取り扱い

基本知識

マンションを相続する際に多くの方が疑問に思うのが、エアコンなどの設備や家財道具は相続税の評価対象になるのかという点です。マンション内には様々な家電製品や家具が置かれていますが、これらをすべて評価する必要があるのでしょうか。本記事では、相続税評価における家財道具の取り扱いについて、特にエアコンを中心に解説します。

マンション相続における家財道具の基本的な扱い

マンションを相続する際に気になるのが、その中に置かれている家財道具の扱いです。相続税の対象となる財産には「すべての財産」が含まれますが、実際には家財道具はどのように評価されるのでしょうか。

まず基本的な考え方として、相続税法上では、被相続人(亡くなった方)が所有していたすべての財産が相続税の対象となります。これには不動産や預貯金だけでなく、家具や家電製品などの動産も含まれます。しかし、実務上は日常的に使用する家財道具については、特別な価値を持つものを除き、相続税の課税対象から除外されることが一般的です。

国税庁の取り扱いでは、「生活用動産」として一般的な家財道具は、以下の条件に当てはまる場合、相続税の申告において省略することが認められています

  1. 被相続人の日常生活に通常必要と認められるもの
  2. 特に高価なものでないこと
  3. 1点当たりの価額が30万円未満のもの

つまり、一般的な家具や家電製品は、相続税評価上は無視されることが多いのです。これは、これらの物品が中古市場ではほとんど価値がなく、また評価・申告の手間を考慮した実務上の取り扱いといえます。

ただし、骨董品、美術品、宝飾品など特別な価値を持つものや、30万円以上の高額な家財については、相続財産として申告する必要があります。たとえば、高級時計や絵画、古美術品などは相続税の対象となりますので注意が必要です。

また、被相続人が事業用に使用していた動産(事業用の車両、機械設備など)は、事業用資産として別途評価する必要があります。

エアコンの評価-不動産の一部か家財道具か

マンション相続において特に注目すべきは、エアコンの取り扱いです。エアコンは一般的な家電製品ですが、相続税評価においては特殊な位置づけとなることがあります。

建物と一体となったエアコン

マンションに設置されたエアコンは、その設置形態によって評価方法が異なります。ビルトインタイプのエアコンや、配管が壁に埋め込まれているタイプのエアコンは、建物と一体となった「建物附属設備」と見なされることが一般的です。この場合、エアコンは独立した家財道具としてではなく、マンション(建物)の一部として評価されます。

具体的には、マンションの相続税評価額を算出する際に、エアコンの価値はすでにマンションの評価額に含まれていると考えられます。そのため、エアコンを別途評価して申告する必要はありません

国税庁の取り扱いによれば、建物に取り付けられ、容易に取り外しができないものは「不動産の従物」として、建物の一部と見なされます。エアコンの室外機と室内機が配管でつながれ、壁に固定されている場合は、この「不動産の従物」に該当すると考えられるのです。

持ち運び可能なエアコン

一方、窓用エアコンや、簡易的に設置された移動可能なタイプのエアコンは、家財道具として扱われる可能性があります。ただし、前述のとおり、特別な価値を持たない限り、相続税評価上は省略されることが多いでしょう。

エアコン以外の設備機器の扱い

エアコン以外にも、マンションには様々な設備機器が備わっています。これらの取り扱いも確認しておきましょう。

  • システムキッチン、ユニットバス:これらは明らかに建物と一体となった設備であり、マンションの評価額に含まれます。
  • 照明器具:天井や壁に固定された照明器具は、建物附属設備として扱われることが多いです。
  • カーテン、ブラインド:これらは一般的に家財道具として扱われますが、価値が低いため評価省略されることが多いです。
  • 食器洗浄機、IHクッキングヒーター:ビルトインタイプのものは建物附属設備として、独立した据え置き型のものは家財道具として扱われます。

相続税申告における家財道具の実務的な取り扱い

相続マンションに関する相続税申告において、家財道具をどのように取り扱うべきか、実務的な観点から見ていきましょう。

申告時の基本的な考え方

相続税申告においては、課税価格の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合に申告が必要となります。この課税価格を計算する際、家財道具の価値をどう扱うかが問題となります。

実務上の取り扱いとしては、以下のように整理されています。

  1. 日常使用する家財道具:日常使用する家具や家電は、特別な事情がない限り申告書に記載する必要はありません。「生活用動産」として省略可能です。
  2. 高額または特別な価値のある動産:美術品、宝飾品、骨董品などは評価対象となります。市場価値や鑑定価格に基づいて適正に評価しましょう。
  3. 建物附属設備:エアコンなどの建物附属設備は、不動産評価に含まれるため、別途評価する必要はありません。二重評価にならないよう注意しましょう。

実務上の対応方法

相続税申告の準備をする際は、次のようなステップで進めるとスムーズです。

  1. 家財道具の棚卸し:まず、マンション内の家財道具のリストを作成します。特に価値のあるものを特定しておくことが重要です。
  2. 評価対象物の選別:一般的な家具や家電は評価省略できますが、特別な価値を持つもの(美術品、貴金属など)や高額なものは評価対象とします。
  3. 建物附属設備の確認:エアコンなどが建物附属設備に該当するかどうかを確認します。該当する場合は、マンションの評価額に含まれているとみなします。
  4. 適正な評価方法の選択:評価対象となる家財道具については、中古市場における実勢価格や、専門家による鑑定価格などを参考に評価します。

さいごに

相続税申告は複雑であり、家財道具の評価については、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。特に、美術品や骨董品など特別な価値を持つ家財がある場合や、エアコンなどの設備が建物附属設備に該当するかどうか判断が難しい場合は、専門家のアドバイスが重要です。

また、相続税申告の期限は被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内と定められています。家財道具の評価には時間がかかることもありますので、早めに準備を始めることが大切です。

股抜きナツメグ

40代の男性会社員。都内で親のマンションを相続したことをきっかけに、相続マンションを取り巻く複雑怪奇な問題に直面。今後起こり得る事態への不安や、売却や賃貸といった判断の難しさに悩まされた経験から、本サイトでの情報発信を開始。

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