超重要書類『登記簿謄本』について知る

専門知識

相続手続きを進める上で、極めて重要な書類が「登記簿謄本」です。この記事では、マンション相続における登記簿謄本の重要性、入手方法、記載内容の読み方について説明します。

登記簿謄本とは何か?相続手続きにおける重要性

登記簿謄本の基本

登記簿謄本(とうきぼとうほん)とは、不動産(土地・建物)の権利関係を公的に証明する書類です。正式名称は「登記事項証明書」ですが、一般的には「登記簿謄本」という名称が広く使われています。この書類には、マンションの所在地、面積、所有者情報、抵当権の有無など、不動産に関する重要な法的情報が記載されています。

不動産登記制度は明治時代から続く歴史ある制度で、不動産の権利関係を公示することにより、取引の安全を確保する役割を果たしています。登記簿謄本は法務局(または地方法務局)が管理・発行する公文書で、法令の定めにより誰でも請求・取得することができます。

マンション相続における登記簿謄本の重要性

マンション相続においては、登記簿謄本は以下の目的から非常に重要な書類となります。

  1. 権利関係の確認
    被相続人(亡くなった方)が本当にそのマンションの所有者であったのかを確認できます。名義が違っていた場合、相続できない可能性があります。
  2. 物件情報の正確な把握
    相続するマンションの正確な所在地、専有面積、建物の構造、敷地権(土地の持分)の割合などを把握できます。
  3. 担保権(抵当権など)の確認
    マンションに住宅ローンの残債があるかどうかを確認できます。抵当権が設定されている場合、相続と同時にローンの返済義務も引き継ぐことになります。
  4. 共有名義の確認
    マンションが被相続人と他の方との共有名義になっている場合、その持分割合を確認できます。
  5. 相続税評価のための基礎資料
    相続税の計算には、不動産の評価額が必要ですが、その際に登記簿謄本の情報が基礎資料となります。

登記簿謄本の入手方法と費用

登記簿謄本を取得する方法は主に次の3つがあります。それぞれの方法のメリット・デメリットや費用を見ていきましょう。

1. 法務局窓口での取得

最も一般的な方法は、マンションの所在地を管轄する法務局(または地方法務局)に直接出向いて取得する方法です。

必要なもの

  • マンションの所在地情報(住所)
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
  • 手数料(1通600円)

手続きの流れ

  1. 法務局の窓口で「登記事項証明書交付申請書」に必要事項を記入
  2. 窓口に申請書と手数料を提出
  3. 30分〜1時間程度で交付される

請求先の法務局について
マンションの所在地を管轄する法務局に請求します(例:東京都新宿区のマンションであれば、東京法務局新宿出張所)。管轄がわからない場合は、法務局のウェブサイトで「管轄検索」を利用するか、電話で問い合わせるとよいでしょう。

メリット

  • その場で即日取得できる
  • 窓口で不明点を質問できる
  • 初めての方でも窓口で記入方法などを教えてもらえる

デメリット

  • 平日の開庁時間内に法務局へ行く必要がある
  • 混雑時は待ち時間が発生する
  • 相続マンションを管轄する法務局である必要がある

2.オンラインでの取得

「登記・供託オンライン申請システム」(通称:登記ねっと)を利用すれば、24時間いつでも申請が可能です。

必要なもの

  • 電子署名・電子証明書(マイナンバーカードの電子証明書が利用可能)
  • クレジットカードなどの電子決済手段

手続きの流れ

  1. 「登記ねっと」にアクセスし、利用者登録を行う
  2. 電子証明書を使用してログイン
  3. 「登記事項証明書の交付請求」を選択し、必要事項を入力
  4. 電子署名を付与して申請
  5. 手数料を電子決済で支払う
  6. PDFでダウンロードまたは郵送で受け取る

メリット

  • 24時間365日申請可能
  • 窓口より手数料が安い(1通520円)
  • 自宅から申請できる
  • PDFでの即時取得が可能な場合がある

デメリット

  • 電子証明書などの準備が必要
  • システムの操作に慣れが必要
  • 初回設定に時間がかかる

3. 郵送での取得

法務局に郵送で申請することも可能です。遠方の物件の場合に便利な方法です。

必要なもの

  • 申請書(法務局のウェブサイトからダウンロード可能)
  • 返信用封筒(切手貼付)
  • 手数料(1通600円)分の収入印紙または郵便為替

手続きの流れ

  1. 申請書に必要事項を記入
  2. 返信用封筒に自分の住所・氏名を記入し、切手を貼付
  3. 手数料分の収入印紙または郵便為替を準備
  4. 上記をまとめて管轄法務局に郵送
  5. 1〜2週間程度で返送される

メリット

  • 法務局に行く必要がない
  • 遠方の物件でも自宅から申請できる

デメリット

  • 取得までに時間がかかる(1〜2週間程度)
  • 郵送中のトラブルリスクがある

4. 司法書士への依頼

専門家である司法書士に依頼して取得する方法もあります。相続手続き全般を依頼する場合は、その一部として登記簿謄本の取得も依頼するのが一般的です。

メリット

  • 手間がかからない
  • 専門的なアドバイスも受けられる
  • 相続手続き全体をサポートしてもらえる

デメリット

  • 取得に要する手数料に加えて司法書士への報酬が必要

登記簿謄本の読み方と相続時のチェックポイント

登記簿謄本には専門用語が多く使われており、初めて目にする方には難解に感じるかもしれません。ここでは、マンション相続において特に重要な情報を中心に、登記簿謄本の読み方と相続時のチェックポイントを解説します。

登記簿謄本の構成

マンションの登記簿謄本は、大きく分けて以下の3つの部分から構成されています。

  1. 表題部:物件の所在地や面積など、物理的な情報が記載されています。
  2. 権利部(甲区):所有権に関する情報が記載されています。
  3. 権利部(乙区):抵当権などの担保権に関する情報が記載されています。

それぞれの部分を詳しく見ていきましょう。

表題部の読み方

表題部には、以下のような情報が記載されています:

  • 所在:マンションの住所
  • 家屋番号:登記上の建物を特定する番号
  • 建物の名称:マンションの名前
  • 構造:鉄筋コンクリート造(RC)などの建物の構造
  • 床面積:専有部分の面積

マンションの場合、「○棟○号」などの表記によって区分所有建物であることが示されています。また、「敷地権の表示」という欄には、マンションの敷地(土地)に対する権利の割合が記載されています。

相続時のチェックポイント

  • 専有面積は実測図や間取り図と一致しているか
  • 敷地権の割合は記載されているか(相続税評価の際に必要になります)
  • マンション名や号室は正確か

権利部(甲区)の読み方

甲区には、所有権に関する情報が記載されています。

  • 所有者の氏名・住所:現在の所有者(被相続人)の情報
  • 所有権の取得原因:「売買」「相続」など、どのようにして所有権を取得したか
  • 所有権の取得日付:いつ所有権を取得したか

相続において最も重要なのが、この「所有者」の情報です。被相続人の名義になっているかをしっかり確認しましょう。また、共有名義になっている場合は、持分の割合(1/2など)も記載されていることを確認しましょう。

相続時のチェックポイント

  • 所有者が被相続人になっているか
  • 共有名義の場合、持分割合はどうなっているか
  • 所有者の住所や氏名は最新のものか(古い情報のままだと相続手続きが複雑になることがあります)

権利部(乙区)の読み方

乙区には、抵当権などの担保権に関する情報が記載されています:

  • 抵当権者:住宅ローンを組んでいる金融機関名など
  • 債権額:設定された抵当権の金額(必ずしも現在の借入残高と一致するわけではありません)
  • 設定日付:抵当権が設定された日付

この乙区の情報は、相続時に非常に重要です。抵当権が設定されており、かつ住宅ローンの返済が完了してければ、相続と同時にローンの返済義務も引き継ぐことになります。残債の確認が必要です。

相続時のチェックポイント

  • 抵当権が設定されているかどうか
  • 抵当権者(多くの場合、金融機関)はどこか
  • 複数の抵当権が設定されていないか
  • 抵当権以外の権利制限(差押えや仮差押え、賃借権など)がないか
  • 抵当権の設定日から推測して、残債がある可能性があるか
股抜きナツメグ

40代の男性会社員。都内で親のマンションを相続したことをきっかけに、相続マンションを取り巻く複雑怪奇な問題に直面。今後起こり得る事態への不安や、売却や賃貸といった判断の難しさに悩まされた経験から、本サイトでの情報発信を開始。

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