相続マンションの『賃貸経営』始め方ガイド-初期費用から収益予測まで

基本知識

マンションを相続したものの、自分では住む予定がない場合、多くの方が「賃貸に出す」という選択肢を検討します。しかし、初めての賃貸経営には様々な疑問や不安があるものです。この記事では、相続マンションを賃貸経営する際の基本的な流れや必要な初期費用、そして収益予測の立て方までを説明します。

相続マンションを賃貸に出す事前準備と初期費用

物件の状態確認と必要なリフォーム

相続マンションを賃貸に出すための最初のステップは、物件の状態確認です。特に長年住んでいなかった場合や、前所有者が高齢だった場合は、設備の老朽化やメンテナンス不足による諸問題がある可能性があります。

確認すべき主なポイントは以下の通りです。

  • 水回り(キッチン、浴室、トイレ、洗面所)の状態
  • 壁紙や床の傷み具合
  • 電気設備の安全性
  • 窓や玄関ドアの気密性
  • エアコンなどの設備の動作状況

これらの確認を経て、賃貸に出すための最低限のリフォームや修繕が必要になることがほとんどです。一般的なリフォーム費用の目安としては、ワンルームから1LDKで100〜150万円、2LDK以上で150〜300万円程度を見込んでおくと良いでしょう。ただし、物件の状態や築年数、リフォームの範囲によって大きく変動します。

管理規約の確認

マンションを賃貸に出す際には、必ずマンション管理規約を確認してください。一部のマンションでは賃貸を禁止または制限している場合があります。また、賃貸可能であっても、入居者の条件(単身者のみ、ファミリーのみなど)や使用目的(住居専用、事務所利用可など)に制限がある場合もあります。

管理規約に違反して賃貸経営を行うと、トラブルの原因となるだけでなく、最悪の場合は損害賠償を求められる可能性もあるため、事前の確認は必須です。

初期費用の内訳

賃貸経営を始めるにあたっての主な初期費用は以下の通りです。

  1. リフォーム・修繕費用:100〜300万円(物件状況による)
  2. 不動産会社への仲介手数料:家賃の0.5〜1ヶ月分
  3. 広告費:3〜5万円
  4. 火災保険料(家主向け):年間1〜3万円程度
  5. 鍵交換費用:1〜3万円
  6. 清掃費:3〜10万円

これらに加えて、賃貸管理を不動産会社に委託する場合は、初期設定費用として1〜3万円程度かかることもあります。トータルでは、リフォーム費用を除いても15〜20万円程度の初期費用を見込んでおく必要があるでしょう。

賃貸経営の収益予測と運用のポイント

想定される収支計算

賃貸経営の収益性を判断するためには、年間の収支計算が重要です。以下に一般的な収入と支出の項目を示します。

【収入】

  • 年間家賃収入:月額家賃 × 12ヶ月

【支出】

  • 管理費・修繕積立金:年間12ヶ月分
  • 賃貸管理手数料:家賃の5〜10%(管理会社に委託する場合)
  • 固定資産税・都市計画税:物件評価額による(年間10〜30万円程度)
  • 所得税・住民税:不動産所得に対する税金
  • 修繕費:年間家賃収入の5〜10%程度を目安に積み立て
  • 空室リスク:年間家賃収入の8〜12%程度を見込む

例えば、月額家賃10万円のマンションの場合、年間収入は120万円となりますが、上記の支出を考慮すると、実質的な手取り収入は60〜80万円程度になることが多いです。

賃貸管理の方法選択

賃貸経営では、物件の管理方法として「自主管理」と「管理委託」の2つの選択肢があります

自主管理のメリット・デメリット

  • メリット:管理手数料が不要で収益性が高い
  • デメリット:入居者とのトラブル対応や夜間緊急対応などの負担が大きい

管理委託のメリット・デメリット

  • メリット:手間がかからず、専門知識を活かした管理が可能
  • デメリット:管理手数料(家賃の5〜10%)がかかる

特に遠方に住んでいる場合や、本業が忙しい方は、多少の手数料を支払ってでも管理委託を選ぶことにメリットがあります。管理委託には「借上げ」と「一般管理」があり、借上げは安定収入が得られる一方で家賃が低めに設定されることが多く、一般管理は通常の家賃で貸し出せますが空室リスクは所有者が負担します

相続マンションの賃貸経営における長期的視点

将来的な資産価値と修繕計画

マンションは経年とともに資産価値が低下する傾向にあります。特に築30年を超えると、大規模修繕や設備更新の必要性が高まり、これらの費用負担が賃貸経営の収益性に大きく影響します

長期的な視点では、以下のポイントを考慮しておくことが重要です。

  1. 大規模修繕のタイミングと費用:一般的に12〜15年周期で実施され、1戸あたり100〜300万円程度
  2. 設備の更新時期:給湯器(10〜15年)、エアコン(10〜15年)、キッチン・バス(15〜20年)
  3. マンション全体の老朽化対策:管理組合の修繕積立金の積立状況や長期修繕計画の健全性

これらの将来コストを見越した上で、毎年の収益から一定額を積み立てておくことで、突発的な支出に対応できる体制を整えておくことが賢明です。

税金対策と節税のポイント

賃貸経営における税金対策も重要なポイントです。不動産所得に対しては所得税・住民税がかかりますが、経費を適切に計上することで節税が可能です。

主な経費計上できる項目は以下の通りです。

  • 管理費・修繕積立金
  • 減価償却費(建物部分の取得価額を法定耐用年数で割った金額)
  • リフォーム費用(20万円未満は全額経費、20万円以上は資本的支出として減価償却)
  • 修繕費・メンテナンス費
  • 賃貸管理手数料
  • 火災保険料
  • ローン返済の利息部分(元本部分は経費対象外)

特に相続マンションの場合、相続時の評価額が取得価額となるため、適切な評価を受けておくことが節税につながります。また、将来的に別の不動産への買い替えや譲渡を検討する場合は、譲渡所得税の特例制度なども視野に入れた計画が必要です。

まとめ

相続マンションの賃貸経営では、安定した収益源にするためには、適切な準備と運用を行うことが肝要です。初期費用や運用コストを正確に把握し、長期的な視点で資産価値の変動や修繕計画を考慮することが重要です。特に初めての賃貸経営では、専門家(不動産会社や税理士など)のアドバイスを積極的に取り入れながら進めることをお勧めします。

また、単に「賃貸に出す」という選択肢だけでなく、物件の状況や立地、ご自身のライフプランに合わせて、「売却する」や「リノベーションして自身で使用する」といった選択肢も含めて総合的に判断することが、相続不動産の有効活用につながるでしょう。

股抜きナツメグ

40代の男性会社員。都内で親のマンションを相続したことをきっかけに、相続マンションを取り巻く複雑怪奇な問題に直面。今後起こり得る事態への不安や、売却や賃貸といった判断の難しさに悩まされた経験から、本サイトでの情報発信を開始。

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