『管理計画認定制度』とは?制度の概要とマンション資産への影響

専門知識

マンションを相続した場合、その資産価値をどう維持・向上させるかは重要な課題です。近年注目されている「マンション管理計画認定制度」は、マンションの管理状態を客観的に評価し、一定の基準を満たすマンションを認定する制度です。この制度が、相続マンションの価値にどのような影響を及ぼすかについて考えます。

管理計画認定制度の概要と目的

マンションの老朽化や管理組合の担い手不足など、マンション管理をめぐる課題が深刻化する中、2022年4月より「マンション管理計画認定制度」が本格的にスタートしました。この制度は、2020年に改正された「マンション管理適正化法」に基づき創設されたもので、マンションの管理状況が一定の基準を満たしている場合に地方公共団体がそれを認定する仕組みです。

制度の主な目的は、マンションの管理水準の向上と管理状況の「見える化」です。認定を受けるためには、管理組合による管理計画を提出し、管理組合の運営や管理規約、維持修繕などに関する一定の基準をクリアする必要があります。具体的な認定基準は以下のとおりです。

  • 管理組合の運営:総会の定期的な開催や理事会の設置など
  • 管理規約:管理規約の作成・見直しの状況
  • 管理組合の経理:修繕積立金の計画的な積立や滞納対策の実施状況
  • 長期修繕計画:長期修繕計画の作成・見直し状況
  • 維持修繕:定期的な点検・補修の実施状況

この制度によって、マンションの管理状況が客観的に評価され、「認定マンション」という新たな価値基準が生まれました。認定の有効期間は5年間で、その後は更新手続きが必要となります。

制度の実施主体は各地方公共団体ですが、すべての自治体で導入されているわけではありません。マンション管理適正化推進計画を策定している自治体においてのみ、この認定制度が実施されています。2024年現在、ほぼすべての政令市や中核市で制度が導入されており、今後さらに多くの自治体に広がることが予想されます。

相続予定のマンションが認定制度を実施している自治体にある場合は、制度の動向に注目しておくことが重要です。認定の有無が資産価値に影響を与える可能性があるためです。

管理計画認定がマンション資産価値に与える影響

管理計画認定制度がマンションの資産価値にどのような影響を与えるのかについて考えてみましょう。

資産価値の向上要因

認定マンションは、適正な管理が行われていることの「お墨付き」を得たことになります。これにより、以下のような資産価値向上の効果が期待できます。

  • 市場での評価向上購入希望者にとって、管理状態が良好であることが公的に証明されているマンションは安心感があります。これは特に、中古マンション市場において大きな差別化要因となり得ます。
  • 金融機関の優遇措置:すでにいくつかの金融機関では、認定マンションの購入時に住宅ローンの金利優遇措置を設けています。例えば、フラット35では「管理計画認定マンション」向けの金利引下げプランが提供されています。
  • 修繕・維持管理の効率化:認定基準を満たすために計画的な修繕や維持管理が行われることで、長期的には大規模な修繕費用の抑制や予期せぬ修繕の減少につながる可能性があります。
  • 住環境の向上:適切な管理は生活環境の維持・向上にもつながります。これは居住者の満足度を高め、間接的に資産価値の維持に貢献します。

相続時の留意点

マンションを相続する予定の方は、以下の点に留意することをお勧めします。

  • 認定状況の確認:相続予定のマンションが認定を受けているか、または認定要件を満たす可能性があるかを確認しましょう。
  • 管理組合への参加:相続後は、積極的に管理組合の活動に参加することで、マンションの管理状態を把握し、認定取得や維持に貢献できます。
  • 修繕積立金の状況確認:認定基準の一つに「修繕積立金の計画的な積立」がありますが、積立金が不足している場合、将来的に一時金の徴収など追加負担が発生する可能性があります。
  • 税制面での影響把握:現時点では認定マンションに対する直接的な税制優遇措置はありませんが、将来的に導入される可能性もあります。最新の情報を常に確認しておくことが重要です。

管理計画認定制度を活用した相続マンションの運用戦略

相続したマンションを長期的に資産として活用していくためには、管理計画認定制度を戦略的に活用することが有効です。ここでは、認定制度を踏まえたマンション運用の選択肢と戦略について解説します。

保有を継続する場合の戦略

相続したマンションを売却せず保有し続ける場合、認定取得は資産価値の維持・向上に役立ちます。

  • 積極的な管理組合への関与:管理組合の理事や役員として参加し、認定取得や維持に積極的に関わることで、マンション全体の価値向上に貢献できます。
  • 長期修繕計画の見直し:認定基準を満たすためには適切な長期修繕計画が不可欠です。計画の見直しや改善提案を行い、将来の大規模修繕に備えることが重要です。
  • 賃貸活用の場合の優位性:相続したマンションを賃貸に出す場合、認定マンションであることは入居者募集の際のアピールポイントになります。「適切に管理されている」という安心感は、入居希望者の決断を後押しするでしょう。

売却を検討する場合の戦略

相続したマンションの売却を検討している場合も、認定制度は有効に活用できます。

  • 売却前の認定取得:マンションが認定基準を満たしている、または少ない投資で基準を満たせる状態であれば、売却前に認定を取得することで売却価格の向上が期待できます。
  • 認定取得のための働きかけ:個人で認定を取得することはできませんが、管理組合に対して認定取得を提案し、必要な改善策を共同で実施することは可能です。
  • 認定制度を活用した査定交渉:不動産会社との売却価格交渉の際、認定マンションであることや認定基準に近い管理状態であることをアピールポイントとして活用しましょう。
  • 適切なタイミングの見極め:認定制度はまだ新しく、その市場価値への影響は今後さらに大きくなる可能性があります。市場の動向を見極めながら、最適な売却タイミングを検討することが重要です。

さいごに

管理計画認定制度は、マンションの「管理状態」という従来あまり注目されていなかった要素に光を当て、それを資産価値として可視化する画期的な仕組みです。相続によってマンションを取得する予定の方は、この制度を理解し、活用することで、より効果的な資産運用やマンションライフを実現しましょう。

股抜きナツメグ

40代の男性会社員。都内で親のマンションを相続したことをきっかけに、相続マンションを取り巻く複雑怪奇な問題に直面。今後起こり得る事態への不安や、売却や賃貸といった判断の難しさに悩まされた経験から、本サイトでの情報発信を開始。

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