【Q&A_2】相続したマンションを売りたいのですが、買い手がつきません。どうしたらよいでしょうか?

Q&A集

ご質問

52歳の会社員で、妻と大学生の子ども2人の4人家族です。

昨年、父が他界し、都内の中古マンションを相続しました。築35年、最寄り駅から徒歩12分、3LDK(約65㎡)の物件です。父は20年前に購入し、10年前に一人暮らしを始めました。相続時の不動産会社の査定では1,800万円程度とのことでした。

現在、私たち家族は持ち家に住んでおり、このマンションは空き家状態です。毎月の管理費(15,000円)と修繕積立金(18,000円)で合計33,000円の出費がかかっています。また、固定資産税も年間約10万円発生しています。経済的な負担を減らすため、相続から3ヶ月後に売却を決意し、不動産会社に仲介を依頼しました。

しかし、6ヶ月経った今でも全く買い手がつきません。当初は1,800万円で売り出しましたが、3ヶ月後に1,600万円に値下げしても反応がありません。内覧も数件あったものの、「設備が古い」「リフォームが必要」という理由で見送られています。

このまま保有し続けるのは経済的負担が大きく、かといって大幅な値下げをするのも抵抗があります。賃貸に出すという選択肢も考えましたが、リフォーム費用が最低でも300万円はかかると言われ、踏み切れないでいます。

このような状況で、どのような選択肢があるのでしょうか?売却を成功させるコツや、もし売れない場合の代替策など、プロの視点からアドバイスをいただけると大変助かります。

回答

マンション売却が進まない原因と市場の実態

相続したマンションの売却がうまくいかず、ご心配のことと思います。まずは、なぜ買い手がつかないのか、市場の実態から分析してみましょう。

築35年という築年数は、中古マンション市場において一つの壁になっています。特に東京都内では、築30年を超えるマンションは「旧耐震基準」との誤解を受けやすく(実際は1981年の新耐震基準導入後の物件でも)、購入をためらう検討者が少なくありません。また、最寄り駅から徒歩12分という立地は、都内の物件としては「駅近」とは言えない距離であり、購入検討者にとって魅力が薄れる要因となります。

現在の中古マンション市場では、「住むための物件」と「投資用物件」で買い手の視点が大きく異なります。住むための購入者は「即入居できる状態」を重視し、設備の古さやリフォームの必要性は大きなマイナスポイントです。一方、投資目的の購入者は「利回り」を重視するため、家賃収入と購入価格のバランスが取れなければ興味を示しません。

この物件は、現状では両方の層にとって魅力が不足している状態と言えるでしょう。

価格設定と売却戦略の見直し

まず、価格設定について考えてみましょう。中古マンションの相場は地域や物件特性によって大きく異なりますが、築35年の物件では新築時の価格から50〜70%程度下落していることが一般的です。現在の売り出し価格1,600万円が適正かどうかは、同じエリアの同条件物件の成約事例を確認うえ判断する必要があります

実際に売却を実現させるには、次のような価格戦略が考えられます。

  1. 市場調査の徹底: 複数の不動産会社から査定を取り直し、成約事例(実際に売れた価格)を重視した価格設定を行う
  2. 段階的な値下げ: 現在の1,600万円から、例えば2週間ごとに50万円ずつ下げるなど、計画的な値下げスケジュールを立てる
  3. 底値の設定: 「これ以上は下げられない」という最低ラインを事前に決めておく(例:1,300万円など)

価格以外の売却戦略としては、次のアプローチが効果的です。

物件の魅力を高める具体的な対策

買い手がつくためには、物件自体の魅力を高める必要があります。全面リフォームは費用対効果が見合わないケースが多いですが、最小限の投資で印象を良くする方法があります。

  1. ミニマムリフォームの実施: 全面リフォームではなく、見た目の印象を大きく左右する部分に絞って修繕する(例:壁紙の張替え10〜15万円、水回りのクリーニング5〜8万円程度)
  2. ホームステージング: 家具や小物を適切に配置して生活感を演出し、バイヤーがイメージしやすい空間にする(専門業者に依頼すると5〜10万円程度)
  3. 仲介会社の変更や見直し: 現在の仲介会社だけでなく、そのエリアに強い複数の不動産会社と媒介契約を結ぶ(一般媒介契約)
  4. 販売促進資料の充実: プロのカメラマンによる室内写真、間取り図の見やすい修正、物件周辺の生活利便性を示す資料などを準備する

代替策としての賃貸運用の再検討

売却が難しい場合、賃貸運用は依然として有力な選択肢です。300万円のリフォーム費用に抵抗を感じられていますが、賃貸運用の収支計算を具体的に見てみましょう。

  1. 想定賃料: 立地条件や物件状態から、同エリアの類似物件の相場を調査(例:8〜10万円/月程度)
  2. 収支シミュレーション:
    • 年間収入:96〜120万円(賃料8〜10万円×12ヶ月)
    • 年間経費:約60万円(管理費・修繕積立金33,000円×12ヶ月+固定資産税10万円+空室リスク・修繕費等)
    • 年間手取り:36〜60万円程度
  3. 投資回収期間: リフォーム費用300万円÷年間手取り40万円=7.5年

つまり、約7〜8年で初期投資が回収でき、その後は毎年40万円程度の収入が見込めます。これは年利回り2.2〜3.3%に相当し、現在の定期預金等の金利と比較すると優れた投資となる可能性があります。

税金面での検討ポイント

売却や賃貸を検討する際には、税金面も重要な判断材料です。

  1. 売却した場合の譲渡所得税: 相続から3年以内の売却であれば、被相続人の取得費(購入代金から減価償却分を除いたもの)を引き継ぐことができ、それを基に譲渡所得税の概算が可能です。
  2. 賃貸した場合の所得税: 不動産所得として確定申告が必要になります。経費(管理費、修繕積立金、減価償却費など)を差し引いた額に対して課税されます。
  3. 相続税の取得費加算の特例: 相続税を支払った場合、その一部を売却時の取得費に加算できる特例があります。

まとめと具体的なアクションプラン

状況を踏まえ、以下のアクションプランをご提案します。

短期(1ヶ月以内)のアクション:

  1. 複数の不動産会社から改めて査定を取得し、適正価格を把握する
  2. 低コストのミニマムリフォームの見積もりを取る
  3. 賃貸運用した場合の具体的な収支計画を立てる

中期(3ヶ月以内)のアクション:

  1. 売却か賃貸かの最終判断を行う
  2. 売却の場合は、価格戦略と販売促進策を見直す
  3. 賃貸の場合は、ターゲット層を明確にした上で必要なリフォーム工事を実施する

さいごに

今回のケースでは、両方の選択肢を並行して検討しながら、市場の反応を見極めていくことが重要です。どちらを選んでも、今は「何もしない」という選択肢が最も損失が大きいと言えるでしょう。

最終的な判断はご自身の価値観やライフプランによりますが、今後のご相談やより詳細な分析が必要であれば、不動産コンサルタントや税理士などの専門家に個別に相談されることをお勧めします。

股抜きナツメグ

40代の男性会社員。都内で親のマンションを相続したことをきっかけに、相続マンションを取り巻く複雑怪奇な問題に直面。今後起こり得る事態への不安や、売却や賃貸といった判断の難しさに悩まされた経験から、本サイトでの情報発信を開始。

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