親御さんが認知症で施設に入られ、マンションが空き家になってしまった状況は、本当に心配なことと思います。日々の生活に加えて介護で忙しい中でも、少しずつできることから始めていきましょう。
今すぐできる!マンション管理の基本的な準備
成年後見制度について知っておく
認知症が進んだ親御さんは、法律上「判断能力が不十分な状態」とされることがあります。こうなると、マンションを売ったり貸したりする重要な手続きができなくなってしまいます。
そんな時に役立つのが「成年後見制度」です。家庭裁判所で手続きをすると、親御さんの代わりに財産管理をする人(後見人)を決めてもらえます。後見人になれば、マンションの管理費を払ったり、必要に応じて売却の手続きを進めたりできるようになります。
手続きは少し時間がかかりますが、将来のことを考えると検討する価値があります。まずは地域の相談窓口で話を聞いてみることから始めてみてください。
マンション管理組合との関係を大切に
マンションが空き家になっても、管理組合での責任は続きます。管理費や修繕積立金は毎月支払いが必要ですし、重要な決議がある時は参加しなければなりません。
まずは管理会社や理事長さんに「親が施設に入所したこと」と「今後の連絡先」を伝えておきましょう。親切な管理会社なら、重要な連絡事項があった時に電話で知らせてくれることもあります。
郵便物も要注意です。管理組合からの大切なお知らせが届くので、郵便局で転送手続きをするか、定期的にポストをチェックする習慣をつけましょう。
月1〜2回の「お部屋チェック」を習慣に
空き家のマンションで一番怖いのは、水漏れなどの事故です。給湯器が壊れて水が漏れ、下の階に迷惑をかけてしまうケースは珍しくありません。
できれば月に1〜2回、お部屋を見に行く習慣をつけましょう。水道の蛇口をひねって水が出るか、給湯器は正常に動くか、簡単にチェックするだけでも違います。ついでに窓を開けて換気もしておくと、カビの発生も防げます。
防犯面でも気をつけたいポイントがあります。郵便受けに郵便物が溜まりっぱなしだと「空き家」だとバレてしまいます。時々電気をつけて人が住んでいる雰囲気を作ることも大切です。
毎月・毎年かかる費用を整理する
マンションの維持には意外とお金がかかります。まずは現状でどのくらいの費用がかかっているか、整理してみましょう。
毎月必要なのは管理費と修繕積立金です。年に1回は固定資産税、火災保険料もかかります。これらを合計すると、年間でかなりの金額になることがわかります。
特に古いマンションでは、大規模修繕工事の時に追加で数十万円請求されることもあります。長期修繕計画などの資料を管理会社からもらって、今後どのような工事が予定されているか確認しておくと安心です。
将来の相続に向けて今からできる準備
相続のことを考えるのは気が重いかもしれませんが、早めに準備しておくことで、いざという時に慌てずに済みます。一つずつ、できることから始めていきましょう。
マンションの価値を調べてみる
相続税がどのくらいかかるかを知るために、まずはマンションの現在の価値を把握しておきましょう。不動産会社に査定を依頼すれば、無料で市場価値を教えてもらえます。
査定は1社だけでなく、できれば2〜3社に依頼することをお勧めします。会社によって査定額が違うことがありますし、地域に詳しい会社とそうでない会社では、見る目も変わってきます。
インターネットの一括査定サイトを使えば、手軽に複数社に査定依頼ができます。ただし、実際に部屋を見てもらう「訪問査定」の方が正確な価格がわかるので、時間に余裕があるときは訪問査定をお願いしましょう。
相続税の目安を計算してみましょう
マンションの価値がわかったら、相続税がどのくらいかかりそうか、大まかに計算してみましょう。相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×相続人の数」までは税金がかかりません。
例えば、相続人が子供2人なら、4,200万円まで(3,000万円+600万円×2人)は相続税がかかりません。マンションの価値が3,000万円で、他に大きな財産がなければ、相続税を心配する必要はないということになります。
ただし、親御さんに預貯金や生命保険、他の不動産がある場合は、それらも合わせて計算する必要があります。心配な場合は、税理士さんに相談するのが確実です。最近は初回相談無料の事務所も多いので、気軽に話を聞いてもらえます。
重要な書類を整理・保管する
相続手続きでは、たくさんの書類が必要になります。今のうちに親御さんの重要書類がどこにあるか、確認しておきましょう。
特に大切な書類の例を示します。
- マンションの権利証(登記済証)または登記識別情報
- 固定資産税の納税通知書
- 管理組合からの書類一式
- 銀行の通帳、印鑑
- 生命保険の証券
- 年金関係の書類
これらの書類は、できれば一箇所にまとめて保管しておくと、後で探し回る手間が省けます。親御さんが元気なうちに、一緒に整理できれば理想的です。
家族間で十分に話し合う
相続では、家族間での話し合いが重要になります。特にマンションのような分けにくい財産については、早めに家族の意向を確認しておくことが大切です。
「誰がマンションを相続するか」「売却して現金化するか」「賃貸に出すか」など、選択肢はいくつかあります。それぞれのメリット・デメリットを家族で話し合っておけば、いざという時にスムーズに決められます。
また、相続人が複数いる場合は、マンション以外の財産も含めて、どのように分けるかも考えておく必要があります。「長男がマンションを相続する代わりに、預貯金は他の兄弟が相続する」といった調整も要検討です。
空きマンションの活用方法と選択肢を考える
相続したマンションをどうするか、主な選択肢は「売却」「賃貸」「そのまま保有」の3つです。それぞれのメリット・デメリットを理解して、ご家族の状況に合った選択をしましょう。
売却という選択肢
マンションを売却する最大のメリットは、現金化できることです。相続税の支払いが必要な場合や、兄弟間で財産を分けたい場合には、売却が最もシンプルな解決策となります。
売却のタイミングも重要です。相続してから3年10ヶ月以内に売却すれば、「相続税の取得費加算」という特例を使って税負担を軽くできる可能性があります。また、親御さんが住んでいた家を相続人が売る場合は、「空き家特例」により3,000万円の特別控除を受けられることもあります。
ただし、売却にも注意点があります。マンション市場の動向により、思ったより安い価格でしか売れない可能性もあります。また、売却には仲介手数料や登記費用などの経費もかかります。
賃貸として活用する方法
マンションを貸し出して家賃収入を得るという方法もあります。立地が良く、賃貸需要が見込めるマンションなら、安定した収入源になる可能性があります。
賃貸経営のメリットは、継続的な収入が期待できることです。また、将来的に不動産価値が上がれば、売却時により高い価格で売れる可能性もあります。
しかし、賃貸経営にはリスクもあります。入居者が見つからない「空室リスク」、家賃を払ってもらえない「滞納リスク」、設備の故障や修繕が必要になる「維持管理リスク」などです。また、賃貸収入には所得税もかかります。
賃貸を検討する場合は、地元の不動産会社に相談して、そのマンションの賃貸需要や想定家賃を確認してみましょう。管理を任せられる管理会社があるかどうかも重要なポイントです。
そのまま保有を続ける場合
売却も賃貸もせず、そのまま保有し続けるという選択肢もあります。将来的に家族の誰かが住む予定がある場合や、思い出の詰まった家を手放したくない場合などに選ばれることがあります。
保有を続ける場合の最大の課題は、維持費用です。管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料など、年間数十万円の費用がかかり続けます。空き家のままでは収入がないため、これらの費用はすべて持ち出しになります。
また、マンションは時間とともに古くなり、価値が下がっていく可能性もあります。大規模修繕工事では追加費用が発生することもあるため、長期的な資金計画が必要です。
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